季節ある日本。日本では一年を二十四もの季節に分け、
自然の変化を敏感に感じ文化を育んでまいりました。
そして季節は永遠に巡るもの。
私たちは変わりゆくものと変わらないものを同時に感じ取り、
楽しんできたのです。
「永楽二十四節気」は京文化を中心に
日本の季節・文化に支えられる永楽屋の巡りゆく一年を写真集として集めました。
写真提供:梅田彩華・永楽屋、他
寒の入り、寒さが厳しくなる頃。山からの風は本当に身を切るよう、池の水も凍りつく。
しかし冬来たりなば春遠からじ。人も自然も春を想い、今はじっと耐える。
昔から冬の良質な蛋白源として重宝されてきた味噌。黒大豆味噌、金山寺味噌、白味噌、八丁味噌など、各地の気候と風土が異なる風味を育んできた。それらは炊き合わせることでさらに深みと豊かさを増す。
体と心に染み入る滋味で豊かな味わい。
味噌はもともと調味料ではなく保存食であり、現在も他の食材と合わさることでおかずとして食される。
永楽屋ではさまざまな具材にあわせ複数の味噌を調合し、お米との相性の良い上質な「おぶみそ」を仕立てる。
永楽屋のおぶみそには、丹波の黒大豆味噌、徳島の金山寺味噌、京都の白味噌、愛知の八丁味噌など、良質で風味豊かな味噌を厳選。具材に合わせてそれぞれ独自で調合し、さらにもろみを加えて丁寧に炊き上げる。まさに味噌と具材の風味を共に引き立てあう逸品。
永楽屋の「京のおぶみそ」は、しっかり味付けして炊いた具材に風味豊かな味噌を合わせた「おかずみそ」です。それぞれに炊き上げた椎茸、昆布、浅利、鰹、貝柱の5種類の具材に合わせて複数の味噌を調合し、滋味深く風味豊かに仕立てました。
しばし続く京の厳しい冬。
白く染まる大原の雪風景は、京の厳かさを静かに映しこむ。
毎朝の開店準備は、お客様の目には触れないおもてなし。店内の掃除、店前の道の掃除、商品の陳列と整列。
それは震えるほど冷たい朝も同じ。その所作のひとつひとつに心をこめて。
店の軒先には睡蓮鉢、四季折々の花を生ける。入店いただく際のささやかな彩り。
これもおもてなしのひとつ。
永楽屋では、お越しになったお客様を茶菓で迎える。冬は温かいお茶、夏は冷たいお茶。お買い物中のほっと一息、ささやかな感謝の気持ちを込めて。
厳しい寒さの中にあって、ほんの少し春の訪れを感じ始める頃。
山深い貴船神社では雪も落ち着き、すぐそこにある新しい季節を待つばかり。
この頃は旧暦の正月で、かつては筍、れんこん、ごぼうなどを雑煮や葩餅にして食べる習慣があった。根野菜は体を温め滋養をつける効果がある。
根野菜は下処理が要で、それぞれを最適な状態に仕立てるため、別々の釜で炊上げるのが美味しさの秘訣。
永楽屋では創業当初から鋳物の釜を使って直火で炊いている。直火は扱いが難しいが、そこは職人の腕の見せどころ。素材や気温に合わせて、五感を総動員させ、火の加減を細かく調節していく。
旬の素材や身近な食材に手間と時間をかけて作られる京のおばんざい。永楽屋の「やさい昆布」も、道南尾札部産の昆布をはじめ、筍、れんこん、ごぼう、椎茸、実山椒など、全てこだわって厳選した国産の素材を炊き合わせたちょっと贅沢なおばんざい。
根野菜を中心に、昆布、椎茸を炊き合わせた京のおばんざいです。歯ごたえのある根野菜にやわらかな昆布、どこか懐かしさを感じさせる優しい味わい。
永く受け継がれてきた京の味覚を食卓にお届けいたします。
雪が雨になり、氷がとけて川へと流れだす頃。京の街ではあちらこちらで梅の花が咲き、風景を薄紅色に染める。春の香りが漂い始める。
この頃、永楽屋ではひなまつりにちなんでお雛様とお内裏様を型どった薄紅色のおひがしを作り始める。職人の手によって、ひとつひとつ丁寧に形づくられる。
永楽屋のおひがしは、和三盆糖の中でも最高級品の阿波和三盆を使う。さっぱりとした甘さと後味の良さ。細かなきめと、飽きのこない上品さが特徴。
一年を通して茶菓として出されるおひがし。永楽屋では、季節ごとに様々な形と味を。味覚だけでなく、視覚でも楽しめるように。
土の中の虫たちがうごめき始め、地上に顔を出し始める頃。冬の寒さは遠のき、野にも黄色い菜の花が咲く。
そして春のお彼岸、生の息吹を感じながら先祖の霊に想いを馳せる。
小豆には邪気を払うという謂れがあり、祝い事の時や季節の節目にさまざまなかたちで食される。
お彼岸に食されるのはおはぎやぼたもち。北海道十勝産「大粒小豆(おおつぶしょうず)」は、大粒で見た目が美しく風味も豊かで、餡を作るには最適。
永楽屋のおはぎは、毎朝職人の手によってひとつひとつ作られる。
ふっくらと炊上げた近江産うるち米「羽二重」は、その名の通り、絹のように滑らかで繊細な香りを持ち、餡の豊かな風味をさらに引き立てる。
餡と米の調和を十分にお楽しみいただけるよう、粒餡とこし餡の2種類のおはぎをご用意。こし餡には「紫」と呼ばれる深炒りのきな粉をまぶし、さらに芳醇で繊細な味わいに仕上げている。
見た目にも楽しい大きさもまた特徴。
ふくよかな風味を持つ北海道十勝産「大粒小豆」と近江産うるち米「羽二重」で仕上げた、永楽屋名物の大判おはぎです。
餅を粒餡で包んだおはぎと、こし餡を包んだ餅に香ばしいきな粉を装ったおはぎの2種類をご用意しております。
待ちわびた春の盛り。
京の風景も柔らかな桜色に染まる。
あちらこちらから甘い香りが漂う。
四季折々の風情を味や色、香りなどで表す京菓子。この季節は桜色に染められた道明寺粉がよく使われる。
鮮やかさが目にも美味しい。
薄紅色の道明寺粉を使う京都の桜餅。
永楽屋の桜餅は静岡県の大島桜の葉を用いて、気品ある香りを道明寺粉に移す。
五感全てで春を感じ、穏やかな季節を祝う。
永楽屋では、道明寺粉の中でも特に粒の細かなものを用い、滑らかに仕立てる。
つぶつぶした食感が舌触り良く、細かな粒には桜の香りも移りやすい。
春の盛りを楽しむ桜の和菓子。
永楽屋の桜餅は、国産の道明寺粉をもっちりと炊き上げ、北海道十勝産小豆で作ったこし餡を包みました。静岡県産の桜葉に塩を少し効かせて、更に餡の風味を引き立てました。
桜色の生地と香り高い桜葉で、春の訪れを楽しむ季節菓子です。
全てが柔らかな光に照らされる頃。
早朝の鷹峯の山には、うっすらとした霞がたなびく。
花札にも描かれ、江戸時代の文人・光悦が好んだことでも知られる小さな山。
春霞の中、樹々に清々しい新緑が芽吹く。
山椒の花は新緑の季節が訪れた頃に開花する。このごく短い期間に吉野で手摘みされた花山椒は、収穫もわずかで貴重な季節の食材。
この季節、希少な奈良県吉野産の花山椒が、永楽屋の職人のもとに届けられる。
山椒の花は自ら熱を発するほど精気が強く、その独特の味と香りは鮮度が要。永楽屋では、早朝に摘み採った山椒の花を香川県小豆島産の無添加醤油とともにその日に炊き上げる。
貴重な吉野産花山椒を醤油だけでさっと炊上げて、淡雪のような食感と爽やかな香りを際立たせる。清らかな春の味覚。
春らしさを感じるピリッとした旬の花山椒。毎年「花山椒」の発売を楽しみにされている方も多く、永楽屋の春の定番です。
ご飯のおともやお酒のおつまみにはもちろん、お料理に少しそえて花山椒の風味を存分にお楽しみいただけます。
春雨が地面に染み入り、芽を出させる頃。
各地の竹林では筍が収穫の時期を迎える。
筍の魅力は、春を感じる独特の香りとコリコリとした独特の歯応え。
それを楽しむ方法は京料理にはたくさんあるが、中でも庶民の味として親しまれているのが佃煮。細かく刻み、木耳(きくらげ)や椎茸などと混ぜ合せることで、食感が更に引き立つ。
永楽屋の佃煮は香川県小豆島産の醤油を使用。小豆島は古くから「油島」とも呼ばれる醤油の名産地で、現在も質の高い醤油を造る蔵が数多くある。
質の高い醤油は素材の旨味を引き出す。筍もこの醤油で春の香りを際立たせる。
細かく刻んだ椎茸、木耳、筍を厳選した醤油で炊き上げ、あっさりとした味とコリコリした食感を楽しむ京佃煮に仕立てる。
ついつい食が進むあっさりとした味とコリコリした食感が楽しい京佃煮です。
具材が細かく刻んであるので食べやすく、老若男女問わず幅広いお客様にご好評いただいております。当店の人気商品の一つです。
暖かな陽気の中、かすかに夏の気配が漂い始める頃。
京の山あいでは田に水が張られ、田植えが行われる。古代より変わらない日本の原風景。
この時期、滋賀県の伊吹の山々では朝倉山椒が実を付け始める。実が大きく香りも豊かなのが特徴だが、実付けの量はあまり多くない貴重な品種。
永楽屋のちりめん山椒は、厳選した朝倉山椒とちりめんじゃこを使う。素材の持ち味を最大限に活かすために、手間ひまかけて作られる。
例えば、ちりめんじゃこに紛れている小さい蛸や海老、そして大きさの違うちりめんじゃこ。食感や風味を守るために、これらをひとつひとつ目で確認し、取り除いていく。
厳選した朝倉山椒と柔らかいちりめんじゃこを香り高くふっくらと炊き上げたちりめん山椒。ごはんに彩りを添える京佃煮の定番。
草木が生い茂り、山の緑が濃くなる頃。東福寺の橋廊にも生気に満ちた木々の香りが立ち込める。
この頃、古来より親しまれてきた山菜のひとつ、わらびも育つ。
わらびの根から採る「本わらび粉」はわらび餅の原料で、強い粘り気と豊かな自然の風味が特徴だが、現在では生産量が少なく貴重なものとなっている。
わらびの根はそのままでは灰汁が強く、わらび粉にするには「さらし」という工程が不可欠。しかし、さらしすぎると本来の風味まで失われてしまう。
ちょうど良い按配にさらされた粉でつくられたわらび餅は、風味豊かで、粘りもあり、口溶けもよい。黒い色は本来の風味を残した証。
現在では寒天や澱粉などで作られることの多いわらび餅、永楽屋では昔ながらの素材と製法によって、わらび本来の風味にこだわっている。深く炒った香ばしいきな粉が、自然の味わいをより引き立てる。
爽やかな川のせせらぎが一年を通じて最も美しく感じられる頃。
亀岡から嵐山へと流れる保津川には鮎が昇り始める。
清らかな水の流れにのって鮎が泳ぐ様は、この季節の季語にもなっている趣きある情景。
優雅な流線を描く姿に重ねた形の生地を一つ一つ丁寧に焼き上げる。
焼きごてで顔と尾を入れて、京都の夏の風物詩 鮎に見立てる。爽やかな季節を楽しむ初夏の和菓子。
爽やかな時節を楽しむ和菓子「若鮎」。
しっとりと香ばしい生地ときめ細かく舌触りのよい求肥の相性よく、程良い甘さが口いっぱいに広がる。求肥は近江産の餅米「羽二重」を用いている。
初夏にふるまわれる、清流の鮎をかたどった和菓子です。特製のふっくらとした生地で、近江産羽二重米で仕立てた求肥(ぎゅうひ)を包んでいます。
もっちりとした食感をお楽しみになれます。
夏の至り。梅雨。
上賀茂神社の境内もしっとりと雨に濡れひと時の静けさに包まれる。
この頃、京都では、半年間の罪のけがれを祓い清めて、残る半年を無病息災を願う神事「夏越祓」(なごしのはらえ)が行われる。
古くから小豆には魔除けの力があるとされ、夏越祓にも外郎(ういろう)に小豆をのせた「水無月」を食べる習慣がある。
永楽屋の水無月には、丹波産大納言小豆を用いる。色艶、粒の大きさ、味、風味、どれをとっても素晴らしい。また「大納言は切腹しない」という名の由来も縁起が良い。
飾り気ない水無月は素材そのものを味わう和菓子。だから最高級の大納言を外郎(ういろう)の上に存分に敷き詰める。
小豆が少なかったり隙間があるものは店頭に並ばない。
「夏越祓」に食される水無月。
永楽屋では縁起菓子ということだけではなく、大きくて柔らかく形も美しい丹波産大納言小豆、京都宇治の抹茶など、素材にもこだわり、美しくさらに美味しく仕上げる。
コンコンチキチン、コンチキチン。
遠くの方から祇園囃子が聞こえてくる。
すこしずつ近づいてくるその心地よい音色は、じっとりとした夏の暑さをほんの少し和らげてくれる。
いま、京都は祇園祭。
室町店のある鯉山町には、山鉾のひとつ「鯉山」が立つ。永楽屋も、わらび餅や水菓子などを店前に並べ、祭りにささやかな涼しさを添える。
山鉾を眺めながら味わう冷たいお菓子の、なんとも美味しいこと。
室町店の露店でお出ししている氷菓、実は本店二階の喫茶室で使用しているものと同じもの。
例えば玉露アイスクリームは、厳選した宇治茶を使った職人こだわりの逸品。これに白玉や和栗などを添えたパフェは、喫茶室の人気メニュー。
楽・抹茶パフェは、アイスクリーム、白玉、和栗、抹茶など厳選した素材を涼しく上品な甘さにまとめた喫茶室おすすめの一品です。
素材ひとつひとつの美味しさと、それらの組み合わせの妙をお楽しみ下さい。
誠実なものづくりから生まれた永楽屋の味。喫茶室だからこそ楽しむことができるこだわりの味。街の喧騒を忘れさせてくれる落ち着いた雰囲気のなか、ちょっとひと息いれたい時などに是非お立ち寄りください。
ゆっくりと和やかなひと時をどうぞ。
暑気が至り、一年で最も暑さが厳しくなる頃。山々に囲まれた京都の街は、うだるような猛暑日が続く。
それでも端々に涼を感じさせる風景。長い歴史で育まれてきた知恵と工夫が感じられる。
暑さに爽やかな涼をお届けするため、半年以上砂糖に漬け込まれた柚子。
名柚子と名高い徳島県木頭産の柚子は、職人が産地に赴き得た方法で保存される。その酸味は、暑さの中の涼。
砂糖は最高純度の糖液から作られた白双糖を用いる。
雑味がなくさっぱりした甘味は、和菓子の素材として最適。
器に移せば広がる、贅沢な柚子のソースは、職人のこだわり。爽やかな甘みと芳醇な香りが、涼を添える。
爽やかな甘みと香りに、さっぱりとした口あたり。器にうつせば柚子のソースが広がります。ぷるんとした食感と芳醇な香り、見た目も美しく、暑い夏の涼を楽しむ一品です。
丹精込めて手作りした木頭柚子の風味をお楽しみください。
秋の気配を感じ始めるとは言うものの、実際は一年で一番暑い日が続くこの頃。京都では精霊送り五山の送り火が催される。街の灯りが消え、夜空の黒を彩る。
日本一とも言われる京の暑さを忘れるひと時。
打ち水 風鈴 川床
京都には夏の暑さを和らげる風習がある。葛を使った冷たい菓子もそのひとつ。
みずみずしい質感、滑らかな舌触り、目と舌で楽しむ夏の涼。
永楽屋の水羊羹は、寒天に葛を加えてより滑らかさを増している。
小豆は厳選した北海道産小豆。
暑さもようやく峠を越え、京都の風景も少しずつ秋の装いを帯びてくる。辺りでは草木が紅く色づき始め、いつのまにか日の出が遅くなったことを知る。
まだ明けきらぬ朝に、少し早い秋を見る。
永楽屋の朝は早い。
まだ薄暗いうちから、その日に店に並べる生菓子、みかさやおはぎなど、鮮度が重要な品を作り始める。
朝の工場には、あわただしい職人たちの足音が響く。
永楽屋の「みかさ」は、蜂蜜を混ぜたこだわりの生地に栗入り粒餡をはさんだ逸品。
焼きたての甘く香ばしい香りをお届けしたく、毎朝心を込めて焼く。
こうして出来上がったみかさは1年を通して毎朝店頭に並べられる。
毎日のことだからこそ、手を抜かず、並べ方にも気を配る。
生地が自慢の永楽屋の「みかさ」。焼きたての香ばしい風味を毎日お楽しみいただくために、職人が朝早くから焼いています。国産の蜂蜜を入れ、しっとりとふわふわに仕立てた、永楽屋自慢の生地です。
秋の気配が深まる頃。山間の野草にも露が宿り始める。
寒さや暑さだけでなく、ささやかな自然の変化にも季節の移り変わりを見る。
この時季に迎える重陽の節句。
平安から、延年を祈る菊花宴や菊の香りを移した菊酒の習慣がある。
別名、菊の節句。
その節句に名をちなんだ「重陽」。
それは永楽屋のあまいものを代表する「琥珀」の原点でもある。
創業以来培われてきた厳しい眼で選ばれた素材を、手間をかけて丁寧に仕上げていく。
そうして生まれるのはまさに芸術品。
花びらが幾重にも重なる菊花をかたどった可憐な姿と、宝石の琥珀を彷彿とさせる美しさ。
美味しさを美しさに封じ込めた和菓子の宝石。
残暑が和らぎ、稲穂も黄金色に色づけば、それはお月見の合図。
十五夜と十三夜の両日を祝うのは平安から伝わる風習で、旬の食べ物を供えることから、十五夜は「芋名月」、十三夜は「栗名月」と呼ばれる。
この頃の丹波の地ではとても質の良い栗が採れる。
「丹波栗」と呼ばれるそれは、大きくて甘味が強く、身は締まって艶がある。
朝と夕の気温の差が大きい丹波の地が生んだ逸品。
丹波の生の栗を仕入れて、いい具合に蒸し上げる。この「いい具合」の見極めがとても難しい。
今では調理済みの栗を仕入れて使う店も少なくないが、そこは決して手を抜いてはいけないところ。
丁寧に蒸し上げた栗をお餅で包み込む。
丹波の秋へ馳せる想いを込める。
日が落ちるのも早くなり、風が冷たくなる頃。
夕暮れに聞く虫の声も次第に小さくなり、京都の街を紅くなった夕日が照らす。
この時季、北の山では、艶やかな深紅の紅玉林檎の旬が訪れる。
酸味の強さ、きめの細かさ、香りの豊潤さが特徴で、数ある林檎の品種の中でも菓子の素材として右に出るものがないとされる。
これを用いた「琥珀 紅玉」。
紅玉林檎ならではの酸味と細かなきめ。ホワイトリカーに漬け込み、いっそう豊かになった香り。その名の通り、深紅の艶やかな美しさ。これら3つの紅玉の風味が、丁寧に封じ込められていく。
素材を知り尽くしているからこそかけられる手間と時間。
さらにそこにシナモンが加えられ、果実らしい深い甘みを引き立てる。紅玉の甘酸っぱさと爽やかさを引き継いだ、まったく新しい「紅玉」が生まれる。
秋から早春の季節限定の琥珀として、紅玉をご用意しました。
ホワイトリカーを使った自家製林檎酒に、甘さを引き立てるシナモン。紅玉林檎の豊かな風味ある琥珀に仕上げました。紅茶との相性もよいひと品です。
徳島県木頭。山奥の地は平地とくらべ、早くも冬の気配が忍び寄る。
木頭は河童伝説が残るほどの清流、那賀川のさらに上流にある自然豊かな地。寒暖の差が大きく、降水量の多い豊かな木頭の風土は、素晴らしい香りの柚子を育む。
この時季、木頭では柚子の収穫が始まる。黄色く色づいた実を手作業でひとつひとつ丁寧に穫ってゆく。その柚子は日本一の品質の高さから特別に銘が与えられ「木頭柚子」と呼ばれている。
永楽屋の 品々に用いられる柚子は、この名高き木頭柚子。
なかでも「柚子じゃむ」は、木頭柚子の美味しさをまるごと楽しめる。
黄金色に熟した大きな柚子の実を、皮とともにゆっくりじっくり炊きこんでいく。
こうして出来上がった「柚子じゃむ」は永楽屋の冬の定番。爽やかな甘みと豊潤な香り、木頭の豊かな自然をまるごと凝縮した逸品。
山の木々が一斉に色づき始める頃。
ふとした瞬間に冬の気配を感じ始める。
秋はとても短い。
京都 日吉町は、京の冬の味覚の代表・千枚漬となる聖護院かぶらの産地。秋から冬にかけての急激な気温の低下が、深い甘みと瑞々しい食感のかぶらを育てる。
まさに京都生まれ、京都育ち。
その京都育ちの聖護院かぶらを千枚と言われるほどに薄く切り、余分な水分を取り除くために塩であら漬。さらに昆布で本漬にする。上品で繊細な冬の味覚に仕上げられる。
永楽屋の「千枚漬」は、旬の聖護院かぶらを透けるほどに薄く切り、丁寧に漬け込んでいます。
蕪(かぶら)のサクサクとした歯切れの良さ、蕪と昆布から生まれる風味で、京の冬を代表する無添加のお漬物として親しまれております。
木々を彩っていた葉が、雨に濡れて落ちる頃。山間部ではその雨が雪に変わり始める。
秋から冬への移り目。
この頃から初春までに育った椎茸は冬茹(どんこ)と呼ばれる。寒い空気にさらされて育つため、肉厚で身が締まり、味が濃厚。特に国産原木栽培の冬茹は栽培量が少なく、とても貴重とされている。永楽屋は原木栽培の冬茹椎茸から特に小粒のものを厳選する。
この貴重な冬茹干し椎茸を一日以上かけて戻し、そこからじっくりと時間をかけて炊き上げる。
自然の中で育つ素材に同じものはひとつとしてない。扱う椎茸の状態や作る日の気候によって味つけや時機を加減し、長年培ってきた職人の腕で変わらぬ味に仕上げる。
椎茸がゆっくり育つ日本の冬。
豊かな風味を引き出す、貴重な原木栽培。
職人の丁寧な手作業。
この3つのこだわりから、永楽屋の看板商品「一と口椎茸」が完成する。
永楽屋の「一と口椎茸」は、国産原木栽培の小粒椎茸を厳選し、職人の手でじっくりと炊き上げた弊店自慢の逸品です。 椎茸の旨味と醤油の風味が一体となった絶妙なまろやかさを是非、ご堪能ください。
冬が深まり寒さが厳しくなる頃。
その年にお世話になった方へ感謝の心を込めて贈り物をするのは、現代も残る美しい日本の風習。清澄かつ凛とした心持ちで、まっすぐと想いを届けたい。
日本三大美林のひとつ「秋田杉」。
節がなく通直で、目が細かく、年輪は均一。特有の淡紅色を帯び、優美な色と香りを持つ。
それはまるであの方への感謝の心そのもの。
そんな秋田杉を職人がひとつひとつ丁寧に組み上げ、つくられていく木箱。
細部にまで行き届いたこだわりは、清澄さの中にぬくもりをも感じさせる。
贈り物はそのものの質の高さに洗練された装いを兼ね備えた方が良い。
例えば「京の朝」の木箱は火を入れて曲げた装いを伴い、京のあさげを彩どる。商品に込められた職人や贈る方の想いに合わせて、包みも整えるのも誠実な仕事のひとつ。
永楽屋はお詰合せなどに香り高い「秋田杉の木箱」をご用意しています。誠実に作られた永楽屋の商品に、さらなる誠実さを重ねあわせます。
贈り物のすべては贈る方の心のあらわれ。是非、大切な方への贈り物にご用命ください。
1年でもっとも昼が短くなる頃。
しんしんと染み入るような寒さは、
京の山並みをよりいっそう厳かさにする。
そして人々はその年を振り返り、また新年に想いを馳せる。
「健康でいられますように」 冷えた体を柚子の香りが立ちこめる湯で暖めながら。
柚子徳島県木頭は日本一の柚子産地。
剣山中腹の独特の気候が、香り高い柚子を生む。永楽屋では実際に現地に足を運び、その場で選び抜いた「木頭柚子」だけを仕入れる。
この色と艶が、厳選の証。
厳選された木頭柚子は職人の手によって、新たな美味しさへと生まれ変わる。
自然の風味をそのまま生かしつつ、またその美しさをも引き継ぎつつ。
柚子の香りを楽しむ日本の心。
豊かな自然が育む木頭柚子。
素材に真摯に向き合う職人の仕事。
この3つが合わさって、永楽屋の「柚子こごり」は完成する。